具体的な治療方法として次の3つが挙げられます
1.低濃度アトロピンによる点眼
アトロピンには以下のような効果が期待されています。
- 眼軸長の伸びを抑制:低濃度のアトロピンは、眼球の成長を調整し、眼軸長の過剰な伸びを抑える効果があるとされています。これにより、近視の進行が遅れることが期待されます。
- 調節筋への作用:アトロピンは瞳孔を広げる作用がありますが、調節筋の働きにも影響を与え、目の過度な負担を軽減することで、近視進行を抑えると考えられたいます。
また、アトロピンには一度伸びた眼軸長を短縮する作用はないため、本剤は近視の進行を抑えることを目的として使用されるものであり、既に進行した近視を改善するものではありません。そのため、適応は進行抑制の効果が期待できる年齢層(5〜15歳程度)が対象になります。
通常、1日1回1滴を就寝前に点眼します。
副作用として、アトロピンは散瞳作用を持ち、瞳孔が拡大すること羞明を感じやすくなります。羞明とは、通常の明るさの光に対して不快に感じる眩しさのことです。添付文書にもこの副作用が最も高い発症率として記載されています。1日1回、就寝前の使用が推奨される理由は、この副作用を避けるためと考えられます。その他、視力障害、霧視(霞んで見えること)、瞳孔異常、頭痛なども比較的多く報告されています。
オルソケラトロジーは、特殊なハードコンタクトレンズを就寝中に装着し、角膜の形状を一時的に変化させることで近視を矯正する方法です。これにより、日中は裸眼で過ごせるようになります。ただし、レンズの装用を中止すると角膜の形状と共に、視力もは徐々に元に戻ります。
3.多焦点ソフトコンタクトレンズ
多焦点ソフトコンタクトレンズは、中心部が遠用、周辺部が近用に設計されており、周辺網膜のデフォーカスを軽減することで、眼軸長の伸長を抑制すると考えられています。臨床試験では、2年間の使用で近視進行が39〜50%、眼軸長の伸長が29〜36%抑制されたと報告されています。ただし、日中に装用するため、自己管理が可能な年齢の子どもが対象となりますが、オルソケラトロジーでは対応できない重度の近視患者に対しても有効とされています。